自分で出来る腰痛の解消法
さて、今回のコラムのお題は「自分で出来る腰痛の解消法」です。
「腰」はその漢字が表すように、「月(体を意味する部首)」の要の部位です。
動いている時も、じっとしている時も様々な負荷がかかっています。
地球には重力があり、私たちには(憎むべき)体重があるからです。
そして疲れが溜まりすぎると、硬くなった腰の筋肉は「重い感じ」や「痛み」として疲れをアピールしてきます。
ですのでストレスをため込まないように、日々少しずつお手入れしてあげる事がとても大切なのです。
当コラムでは、人の体の主に機能面から腰痛の原因やそのお手入れ方法をいくつか簡単にご紹介していきます。
なお、今回のコラムでの腰痛は「筋肉の疲労」を原因としたものとしています。
「筋肉の疲労」以外の原因としては、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症を代表とする「骨格」を原因としたものや、「内臓」の疾患が腰の痛みとして現れたものなどが考えられます。
こちらに関しては原因が画像診断や検査などで分かるものなので、病院でお医者さまに治療および対処法をご相談下さい。
第1章:腰痛の種類と注意点について
まずはじめに注意しておいていただきたい点です。
腰痛には大雑把に分けると『急性の腰痛』と『慢性の腰痛』があります。
『急性の腰痛』は「ぎっくり腰」に代表される急で激しい痛みを伴うものです。
『慢性の腰痛』は「鈍い痛みが3ヶ月以上継続するもの」と定義されています。
『急性の腰痛』に関しては、痛みが出ている部位に炎症などが起きている場合が多く、動かしたり温めたりすると痛みが激しくなる事があります。
「腰の筋肉を痛めている状態」と言うとイメージしやすいでしょうか。
できるだけ動かさないようにして、痛む部位を冷やすよう心がけて下さい。
冷やすのは炎症の亢進を押さえるのと患部の拡大を防ぐ為なので、なるべく早く冷やした方が効果が高いとされています。
どうしても動かなければならない時は、コルセットや骨盤バンドなどがあると、痛む部位への負担が少なくなるのでお勧めです。
症状が出てからしばらくして痛みや炎症がおさまってきたら、ゆっくり温めたり動かしたりすると血流が促されて回復が早くなります。
ただ痛みが酷い場合や治まらない場合は腰の筋肉の炎症以外の心配もあるので、病院で相談する事をお勧めします。
今回ご紹介する「腰痛の解消法」は『慢性の腰痛』に対してのものです。
繰り返しになりますが、急な激しい痛みがある場合は行わないようご注意下さいね。
第2章:どうして腰は痛くなるの?
さて、とてもシンプルなお話をすると腰が疲れたり痛くなったりするのは、腰の筋肉が硬くなるからです。
硬くなる原因としては普段の姿勢や動き、環境やストレスなど色々考えられますが、その辺についてはコラムの別の項で。
とても色々すっ飛ばした気がしますが、気にせずお話を進めます。
腰の筋肉が硬くなると、「機能的な問題」と「血行の問題」が起こります。
「機能的な問題」は体を動かした時、窮屈な姿勢(この場合は普通の姿勢でも、硬くなった腰にとっては窮屈という意味で使用しています)の時に気になります。
体の要であるが故に、どんな動きをする時にも腰には多少の負担が割り振られます。
柔らかければ曲げようが伸ばされようが捻られようが気にもなりませんが、硬い時にはそこに引っかかりが生じます。
イメージ的には体が硬い人がストレッチを行った時の痛みや不快感に近いでしょうか。
勢いをつけたり負荷が大きかったりした時に痛めてしまうという点でも似ていますね。
「血行の問題」は硬くなって縮こまった筋肉に血管が圧迫されて、血液が流れにくくなる事です。
血行が悪くなると必要な栄養素が届きにくくなるので疲れやすくなります。
また老廃物が溜まりやすくなるため、老廃物に含まれる乳酸などの「発痛物質(痛みを神経に伝える物質)」も溜まってしまい、痛みを覚えます。
ただ血行に関しては、環境による冷えなどで血行が悪くなるから筋肉が硬くなるという面もあるので、どちらが原因でどちらが結果と一概には言えないところでもあります。
逆に言うと、この辺の問題を解決してしまえば感じている不快感のかなりの部分は解消できるのです。
では次からは、実際どうするかのお話をしていきます。
メインは『温める』と『動かす』となります。
第3章:自分で出来る解消法!
やっと本題に辿り着きました。ここまで長かったですね。
読んでいただいている方には途中で力尽きずに辿り着いていただく事を祈るばかりです。
ではここからは、『温める』と『動かす』の方法と効果のお話をしていきます。
その1:温めましょう
まずは『温める』ですね。
『動かす』と較べるとあまり努力とか根性とかの必要もなく、事故の可能性も低いのでお勧めです。
物質は基本冷やすと固くなり、熱すると柔らかくなるものではあります。
さらに筋肉には機能として「発熱」の機能があるため、寒くなると縮こまって体熱の放散を防いだり、震える事により運動を行い熱を発生させる役割があります。
逆に暖かい時や暑い時には、皮膚とともに表面積を確保する為に緩みます。効率的に体熱を放散させるためですね。
で何が言いたいかというと、「お風呂最高!」です。
時間および経済力に余裕がある方はぜひ湯船に漬かって下さい。
入浴自体に「温熱効果」だけでなく「浮力効果」や「水圧効果」の3つの大きな効果があります。
(興味のある方はGoogle先生に「入浴 効果」で聞いてみると、詳しく説明してくれているサイト様を紹介してくれますよ。)
腰はもちろん体全体を温める事で、筋肉を緩めて血行を促してくれます。
また硬くなる原因の一つのストレスも(風呂嫌いな人でなければ)解消してくれる面があるので、とてもお勧めです。
携帯カイロなども持ち歩きが出来て、職場のエアコンなど回避しずらい環境による冷えに対処するにはいいですね。
腰に限らず体の疲れは毎日コツコツためたものが一定以上になると不快感となりますので、酷くなる前にこちらも毎日コツコツ解消していきましょう。
さらに次で説明する『動かす』のも温めるのには効果的です。
先に挙げた筋肉の持つ「発熱」の機能ですが、筋肉を動かすためにはエネルギー(カロリー)が使用されるために熱エネルギーが発生します。
また筋肉を動かす事によって(伸び縮みさせる事によって)、血管に対するポンプの役割を果たすので、血行を促してくれます。
入浴などに較べると少しハードルが高いですが、体力の増強やダイエットにもなり一粒で何度もおいしいので、心と体力に余裕がある時に少しずつ無理なく頑張りましょう。
その2:動かしましょう
今度は『動かす』ですが、主に2つの方法が考えられます。
縮こまって硬くなった筋肉を単純に引っ張って伸ばす「ストレッチ」と伸び縮みさせて緊張を解く「運動」です。
身近に言うことを聞いてくれる下僕の方がいらっしゃる場合やマシンがある場合は、「動かしてもらう」というのも楽だしとても効果的です。
しかしなかなかそういった方はいらっしゃらなかったりマシンは高価だったりする事情や、「自分で~!」という趣旨から外れてしまうので、今回は割愛させていただきます。
本題に戻ります。
まず『動かす』際に持っていただきたい意識ですが、腰が辛くなるのは「腰が原因」の場合と「腰以外が原因」の場合があるという事です。
先にお話しましたが、腰は体の要であるが故に、動いたり一定の姿勢をとる時に他の必要な筋肉や関節の可動が不十分だとそのフォローを頑張ってしています。
具体的には、例えば前屈する時に足のふくらはぎやももの裏側、お尻の筋肉が硬い時は腰の筋肉が必死に伸びています。
また体をねじって脇の小物を取る時に肩や背中の筋肉が硬ければ、腰も一生懸命ねじりに参加する訳です。
もちろん一例であり、実際何であれ動く時には体全体を使って一部の筋肉だけに負担をかけないようにするのが望ましいのですが、デスクの横のメモを取るのに毎回ダイナミックな動きを職場の皆様に披露する訳にもいかないでしょう。
また話が逸れました。
何が言いたかったかというと、「腰の筋肉を動かすのも大切だけど、腰の周りの筋肉を動かしてあげるのもとても大切ですよ」という事です。
腰がつらい時に体をひねったり、前後屈したりして腰を動かすのはとても良いことですが、もう少し他の部分も積極的に意識してみると効果が高くなります。
ではどの部分を意識していくか、ですね。
もちろん理想は全身まんべんなくなんですが、それでは本格的なメンテナンスになりすぎて時間と労力がかかりすぎます。
なのでとりあえず、腰の近くにある「お腹」と「股関節」を意識していきましょう。
「お腹」は前後屈をしていただければ分かるとおり、腰と対になっている部位です。
また「股関節」は体の中で肩関節に次ぐ可動域を持ち、運動している時だけでなく立っている時や座っている時の姿勢の固定にも大活躍していますが、その活躍ゆえに機能が落ちた時の周りのフォローはもの凄い負担となります。
実際のところ、私たちは腰の不調を訴えるお客様の施術の際には、できるだけ足やお尻も施術させていただくようにしています。
逆に言えば、腰だけを一生懸命施術しても腰の張りや凝りが取れないことがままあり、股関節の周りを施術しただけで腰がかなり柔らかくなる事も多いという事です。
せっかくメンテナンスをするのであればできるだけ効果的である事が望ましいので、この2カ所は候補に入れていただく事をお勧めいたします。
では動かし方の例をいくつかご紹介します。
[ストレッチ]
前屈…立った状態で体を前に倒すアレです。
腰や背中、お尻や腿の裏側、ふくらはぎまで伸ばせます。
ただ体の硬い人には割ときついので、そういった方は仰向けに寝た状態で片方の足を抱え込み、膝を胸に近づけるようにして下さい。
キツくなりすぎないようにして、腿の裏やお尻を伸ばしてあげて下さい。
後屈…今度は立った状態で後ろに反っくり返る動作です。
前屈に較べると、体にはこちら方面の可動域は少ないので、無理はなさらないように気をつけて下さい。
こちらもキツく感じる方は、仰向けに寝て、腰やお尻の下にクッションや座布団を折ったものなどを入れてゴロゴロしてみて下さい。
クッションを入れる位置によって伸ばせるのがお腹だったり鼠径部(腿の前側の付け根)だったりするので、心地よく感じる所や硬く感じる所を探して調整してみて下さい。
側屈…体を横に倒して伸ばす動作です。あまり危険はないと思いますが、肩が凝っている方などは勢いをつけて伸ばそうとすると背中や脇を痛める事がありますのでお気をつけて。
脇腹だけでなく、お尻の横の部分も意識して伸ばしてあげると効果アップです。
腰部ゆらし…両手を開いた状態で、膝を立てて仰向けに寝て下さい。
足は揃えて膝が直角になるくらいの角度で。
あとはそのまま立てた膝を左へ右へ順番にゆっくり倒して体をねじって下さい。
あまりキツくならない程度に。でも背中や腰、お尻の横の部分が伸びるのが感じられるくらいがいいですね。
伸ばす事でストレッチになりますし、左右に揺らす事で腰回りの関節全体の遊びを作れます。
どのストレッチにも言える事ですが、勢いはつけずにダラダラやっていただくのがお勧めです。
力んで頑張っても伸びにくいですし、体を痛めてしまっては元も子もありません。
繰り返しますが、伸ばしたい所が何となく伸びているのだけ意識して、後はテレビを見ながらダラダラ行うくらいの方が必死に伸ばすよりは効果も大きく長続きすると思います。
ここで書いたもの以外にも、Youtube先生に「ストレッチ 部位(腰とか肩とか知りたい所)」で質問すると色々と教えてくれるので、そちらもお勧めですよ。
[運動]
背筋…足を固定して背中を反らせるものが有名です。
ただ固定するのは割と負荷が大きいのと、固定できる所を探すのが面倒だったりするので、その場合はバンザイの姿勢で俯せ寝て、右手と左足、次に左手と右足を交互に持ち上げる動作がお勧めです。
行う際には顔は前に向けて、心持ちアゴを上げるくらいにしておくと背中を痛める危険が少なくなります。
腹筋…足を固定して上体を持ち上げる動作が一般的です。
これも割ときついのと、腰に負荷がかかるため痛みがある方には負担が大きいです。
最初は仰向けに寝て、足を伸ばした状態でちょこっとだけ浮かす所から初めて下さい。
浮かす時間は10~30秒くらい。無理をしない程度に行って下さい。
スクワット…立ったりしゃがんだりのアレですね。
立つときはつま先を軽く開いて、しゃがむ時は膝がつま先より前に出ないよう気をつけましょう。
上体はなるべく動かさず、角度を変えずに沈み込むように。
イスに座るときのように、少しお尻を後ろに持って行くように沈み込んで下さい。
ラジオ体操…とてもお勧めです。
みなさん一度は経験はあると思います。
子供やお年寄りがやるもののイメージがあるかもしれませんが、とても効果のある運動です。
人の身体の持つ動きのバリエーションのほとんどを盛り込んだ運動なので、一通り行うだけでも十分な効果があります。
動作はゆっくり丁寧に行って下さい。
最後に動かす時の強度ですが、「頑張らない事」を心がけて下さい。
運動能力を伸ばしたいとか身体強度を上げたいとかであれば、運動にもある程度の強度が必要です。
でも今回の目的は腰痛の解消です。
筋肉を適度に伸び縮みさせる事で、血管へのポンプ作用を促す事。
負荷がかかりっぱなしで縮む癖がついた筋肉に緊張と弛緩をゆっくり繰り返させる事で、リラックスさせてあげる事や、昂ぶってる神経を安らげてあげる事の2点です。
頑張りすぎる事で更なる緊張を筋肉に与えて強ばりが強くなったり、事故を起こす事も考えられるので、メンテナンスとしての運動はノンビリ軽めに行って下さい。
さて色々と長くなりましたが、今回のコラムは以上で終了となります。
なるべく簡潔に書く事を目指しましたが、思っていたよりもボリュームのある文章となってしまいました。
読んでいただいた方には感謝いたします。
皆様の健康的な生活の一助となれる事をお祈りしています。
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